鹿児島の芋焼酎を語る上で、必ずといって良いほど耳にする言葉がある。それが黒瀬杜氏。芋焼酎を作り続ける匠の集団、黒瀬一族で構成された集団で、日本中に散らばり杜氏としての評価を高めている。
この黒瀬杜氏組合の中で一番のキャリアをもつベテランのひとりが黒瀬勉杜氏だ。黒瀬勉が芋焼酎と向かい合った年月は五十五年。原料と水にこだわる黒瀬は、簡単には鹿児島以外で芋焼酎を作ろうとはしなかった。この頑固な職人黒瀬勉が、積極的に関わってくれた最新の焼酎が「遠賀の赤芋」だった。
新酒を口にした黒瀬はこう呟いたという。「これは私の人生観を変える酒になるかもしれない」。そして自己の頂点を塗り替えたときにだけ見せる一笑が零れた。
酒に杜氏の銘が入ることは少ないが、黒瀬勉の名を求めて、彼の作はすべて飲んでみたいという焼酎通もいる。この若々しい思考と円熟の技が光る黒瀬勉自慢の一品を、ぜひあなたに味わっていただきたい。



醸造地の鹿児島県指宿市周辺。